商品やサービスの価格はどう決める?小さな事業の価格設定の考え方
事業を始めるとき、悩みやすいものの一つが価格です。
「高すぎたら売れないのではないか」
「最初だから、少し安くした方がいいのではないか」
「周りのお店はいくらくらいで売っているのだろう」
いろいろ考え始めると、なかなか決められないものです。
しかし、価格は単に「いくらで売るか」というだけの話ではありません。
どのようなお客さんに、どのような商品やサービスを提供し、どのくらいの利益を残しながら事業を続けていくのか。
価格設定には、事業そのものの考え方が表れます。
安ければ売れるとは限りません。
反対に、高ければ売れないとも限りません。
大切なのは、自分の事業にとって無理のない価格を考えることです。
最初に、周りの「相場」を調べてみる
これから初めて価格を決めるのであれば、私はまず、周りの相場を一つの基準として見るのがよいと思っています。
たとえば、
- 同じ地域で営業している事業者
- 同じような商品やサービス
- 同程度の内容や品質のもの
が、いくらくらいで販売されているのかを調べます。
相場を見る理由は単純です。
その地域や業界で、実際に商売として続いてきた価格だからです。
もちろん、周りが5,000円だから、自分も5,000円にすればよいという意味ではありません。
あくまで、価格を考える最初の基準です。
相場を確認したうえで、
「自分が同じ価格で提供して、きちんと採算が取れるのか」
を考えていきます。
相場の次に、自分の事業で採算が取れるかを見る
周りと同じ価格で販売していても、自分のところで利益が残らなければ意味がありません。
商品を販売するのであれば、
- 仕入原価
- 材料費
- 送料
- 包装費
- 販売手数料
などがかかります。
サービス業であれば、
- 作業時間
- 移動時間
- 材料費
- 交通費
- 外注費
などもあります。
さらに事業全体では、
- 家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 広告費
- 車両費
- 保険料
- 会計ソフトなどの利用料
といった経費も発生します。
こうした費用を含めて、
「この価格で、本当に自分が必要とする利益を残せるのか」
を確認する必要があります。
私自身のこれまでの感覚では、事業によっては「人件費4割、原価4割、利益2割」くらいの配分を意識する場面もありました。
また、飲食店では材料原価を3割程度に抑えたい、といった考え方もよく耳にしてきました。
ただし、これはすべての事業に共通する基準ではありません。
業種や事業の形によって費用の割合は大きく違います。
大切なのは、一般的な数字をそのまま当てはめることではなく、自分の事業では何にどれくらいのお金がかかっているのかを把握することです。
価格設定の基本的な考え方については、J-Net21でも、原価・需要・競合状況などの視点から解説されています。
自分は、どの価格帯で商売するのか
相場と自分の採算が見えてきたら、次に考えたいのが、自分はどの価格帯で商売をするのかということです。
大きく考えれば、
- 安さを前面に出す
- 相場と同じくらいで提供する
- 相場より高い価格で提供する
といった方向があります。
どれが正しいということではありません。
ただし、相場と同じくらいの価格であれば、
「なぜ同じ価格でも、自分のところへ注文してもらえるのか」
を考える必要があります。
たとえば、
- 技術
- 品質
- 対応の早さ
- 専門性
- 利便性
- 対応できる範囲
- 安心感
- 他では提供していないサービス
などです。
価格が同じなら、価格以外のところで選んでもらう理由が必要になります。
小さな事業は、安売りを基本にしない方がいい
開業したばかりのとき、
「まずは安くして、お客さんを増やそう」
と考えることがあります。
販売業であれば、目玉商品をつくるために、一部の商品を安く販売するという方法はあると思います。
ただ、小さな事業が安売りそのものを基本戦略にすることについては、私は慎重に考えた方がいいと思っています。
大手企業と小さな事業者では、仕入れる数量が大きく違います。
大量に仕入れられる事業者の方が、仕入条件で有利になる場合もあります。
その相手と同じ商品で価格だけを競えば、小さな事業者の方が苦しくなりやすくなります。
しかも、最初から安い価格で始めて、思うようにお客さんが集まらなかった場合、
「やはり値上げしよう」
としても、簡単ではありません。
価格が上がれば、それまで安さを理由に利用していたお客さんが離れることも考えられます。
最初の価格設定は、あとから変えればいいと簡単に考えず、慎重に決めた方がよいと思います。
安くするなら、「通常価格」ではなく割引として考える
だからといって、開業時の割引まで否定する必要はないと思います。
新しいお店やサービスを知ってもらうために、
- オープン記念
- 初回限定
- 期間限定
- お試し価格
などを設定する方法はあります。
その場合は、
本来の価格を安く設定するのではなく、「通常価格はいくらで、今回は割引している」という形にする
方が分かりやすいと思います。
これなら、キャンペーン終了後に通常価格へ戻す理由も明確になります。
「経験がないから安くする」は慎重に考える
開業したばかりだと、
「まだ経験が少ないから、相場より安くしておこう」
と考えることもあります。
しかし、お客さんからすると、提供する側の経験年数は必ずしも分かりません。
料金を払って依頼する以上、
普通に商品やサービスを提供してもらえることを前提に注文する
のではないでしょうか。
また、安さを第一に求めるお客さんが増えれば、その中には難しい依頼が入ってくる可能性もあります。
経験が少なく、その仕事に対応できないと思うのであれば、価格を下げて受けるよりも、
最初から自分が責任を持って提供できる範囲を決めておく
方がよいと思います。
無理に安く受けて、提供する側も困り、お客さんにも満足してもらえないのであれば、双方にとって良い結果にはなりません。
自分の時間も、人件費として考える
価格を考えるとき、忘れやすいのが人件費です。
従業員を雇う場合、支払う賃金だけが人件費ではありません。
条件によっては、社会保険料や雇用保険料など、事業者側に別の負担が発生します。
そして、一人で事業をしている場合でも、自分の時間を0円と考えるべきではありません。
たとえば、お客さんのところで1時間作業する仕事でも、
- 準備
- 移動
- 作業
- 片付け
- 問い合わせへの対応
- 見積り
- 請求
- 経理処理
など、実際にはもっと多くの時間を使っています。
売上が発生するのは、お客さんに商品やサービスを提供している時間だけかもしれません。
しかし、人件費として考えるなら、
その仕事を行うために必要な時間全体を見る
必要があります。
1時間の仕事をするために、実際には2時間かかっているのであれば、その2時間を基準に採算を考えなければ、思っていた利益とは違ってきます。
相場より高くてもよい場合もある
相場より高い価格を付けること自体が悪いわけではありません。
たとえば、
- 高い技術が必要
- 他では対応していない
- 他店で断られた仕事に対応する
- 通常より手間がかかる
- 作業時間が長くなる
といった仕事であれば、通常より高い価格になることは自然です。
実際に増える作業時間や経費を上乗せするだけでなく、
仕事の難易度や専門性そのものを価格に反映する
という考え方があってもよいと思います。
すべての仕事を同じ単価で受けなければならないわけではありません。
大切なのは、お客さんに価格の理由を説明できることです。
販売業では、「売れ残り」も利益に影響する
商品を仕入れて販売する事業では、売れた商品の利益だけを見ていると、実際の利益を見誤ることがあります。
忘れてはいけないのが、売れ残った商品です。
仕入れた商品が売れず、値下げしたり、最終的に廃棄したりすれば、その分だけ利益を圧迫します。
お客さんから見れば、欲しい商品が品切れになることは不便です。
一方で、小さな事業者が大手と同じように、多くの商品を常にそろえておくことが最適とは限りません。
私自身は、小さな事業であれば、
「売り切れ御免」くらいの考え方で、在庫を持ちすぎない方が経営的には安全な場合もある
と思っています。
同じ理由で、最初から商品の種類を広げすぎることにも注意が必要です。
品揃えを増やせば販売できる機会は増えるかもしれません。
しかし、その分だけ売れ残る可能性も増えます。
どこまで品揃えを広げるのかも、価格や利益と一緒に考える必要があります。
売上は「価格×数量」で考える
売上の基本は、
売上=価格×販売数量(件数)
です。
価格を下げれば、同じ売上をつくるために、より多くの商品を販売したり、より多くの仕事を受けたりする必要があります。
特に、一人でサービスを提供する事業では、1日に対応できる件数には限界があります。
たとえば、価格を半分にしたからといって、仕事を単純に2倍こなせるとは限りません。
だからこそ、
「この価格で必要な売上をつくるには、実際に何件の仕事が必要なのか」
まで計算してみる必要があります。
価格設定について、別の考え方も見てみる
価格の決め方には、業種や商品、サービスによってさまざまな考え方があります。
文章だけでなく、別の視点から価格設定を考えたい方は、次の動画も参考になります。
「忙しいのに儲からない」は避けたい
仕事がたくさん入っていると、事業がうまくいっているように感じます。
しかし、
- 毎日忙しい
- 仕事の件数も多い
- 売上もある
- それでも利益がほとんど残らない
という状態では、長く続けていくのは難しくなります。
採算が合わない仕事を、無理に続ける必要はありません。
まして、自分自身の生活が成り立たないところまで無理をして事業を続ける必要もないと思います。
売上の大きさだけでなく、最終的にどれだけ利益が残り、その事業を無理なく続けられるのか。
ここまで見ることが大切です。
何十年も続いている店には、それだけの理由がある
売上の大きな会社は、もちろん立派です。
一方で、地域で何十年も続いている小さなお店を見ると、それも本当にすごいことだと思います。
長く商売を続けるためには、
- 価格
- 仕入れ
- 経費
- お客さん
- 競合
- 時代の変化
などに対応し続けなければなりません。
大きく売上を伸ばすことだけが、事業の評価ではないと思います。
小さくても、利益を残しながら何十年も商売を続けている。
それ自体が、その価格や商売の形が地域のお客さんに受け入れられてきた一つの結果ではないでしょうか。
仕入価格が上がっても、簡単に値上げできるとは限らない
事業を続けていれば、仕入価格や材料費、人件費、光熱費などが上がることがあります。
当然、その分だけ利益は少なくなります。
だからといって、コストが上がるたびに販売価格を変えられるかというと、実際の商売ではそう簡単ではありません。
お客さんにとっては、事業者の仕入価格や経費がどれだけ上がったのかは見えにくいものです。
頻繁に価格を変更すれば、
「また値上げした」
と思われることもあります。
特に小さな事業では、価格を変えることでお客さんが離れてしまわないか、不安を感じることもあるでしょう。
一方で、コストが上昇しているのに価格を据え置き続ければ、その分だけ自分の利益を削ることになります。
値上げをしないことが、お客さんのためになるとは限りません。
利益が出なくなり、商品やサービスの品質を落としたり、最終的に事業そのものを続けられなくなったりすれば、それも良い結果とはいえないからです。
価格を見直す必要が出てきたときは、
- どのコストがどれだけ上がっているのか
- 自分で吸収できる範囲なのか
- 商品やサービスの内容を見直せないか
- 価格を上げた場合でも事業として成り立つのか
- お客さんに値上げの理由を説明できるのか
などを確認したうえで判断する必要があります。
価格を据え置くことにも、値上げすることにも理由が必要です。
中小企業庁では、原材料費や労務費などの上昇を価格へ反映するための情報や支援ツールを公開しています。
価格は慎重に決め、その後も採算を確認する
価格は、一度決めたら頻繁に変えるものではないと思います。
だからこそ、最初に決めるときには慎重に考えたいところです。
まず、
- 同じ地域や業種の相場を調べる
- 自分の原価や経費を計算する
- 必要な利益を考える
- 安売り、相場、高価格のどこを狙うのか考える
- その価格で必要な販売数量や件数を確認する
- お客さんが自分を選ぶ理由を考える
といったことを整理します。
そのうえで価格を決め、実際に事業を始めたら、
- 想定した件数が売れているか
- 思っていた以上に時間がかかっていないか
- 原価や経費は想定どおりか
- 売れ残りやロスが多くないか
- 最終的に利益が残っているか
を確認します。
原材料費や人件費などが変われば、価格を見直さなければならないこともあります。
だからといって、思いつきで頻繁に値段を変えるのではなく、
必要な理由があるときに、事業を続けるための価格へ見直す。
その考え方でよいと思います。
価格設定で大切なのは、
「いくらなら売れるか」
だけではありません。
「この価格で、自分の事業を続けていけるか」
そこまで考えて決めることが、小さな事業では特に大切なのではないでしょうか。
